1. 研究対象の材料・デバイス
当研究室では、半導体の結晶成長から放射線検出デバイスの設計・作製・評価に至るまで一貫した研究を行っています。
II-VI 族化合物半導体( CdTe, CdZnTe,など)の厚膜単結晶成長層や有機-無機ハイブリッド型ペロブスカイト半導体の結晶を用いた高性能の X線、γ線検出デバイスの開発に関するを研究しています。半導体結晶成長条件の最適化により大面積かつ均一な電気特性を有する厚膜結晶成長と特性評価、さらに検出デバイス構造の最適化により高品質かつ信頼性の高い医療などの分野に応用可能な画像検出器アレイの実現を目指しています。
主な研究対象である化合物半導体とペロブスカイト型半導体の結晶構造
2. 有機金属気相成長(MOVPE)法によるII-VI族化合物半導体の高品質厚膜結晶成長の研究
CdTeやCdZnTeは室温動作可能な放射線検出器用材料として知られている。既にバルク単結晶を用いた検出器素子や小規模の画像検出器アレイが開発され、優れた特性を持つことが確認されている。
しかし大面積で均一な電気特性や結晶性を持つバルク結晶の育成は難しい、また、結晶が非常に柔らかく脆いため取り扱にくいといった問題があり、大規模の検出器アレイの製作は極めて困難である。当研究室ではそれらの問題を解決のため、エピタキシャル成長技術であるMOVPE法によるCdTe系化合物半導体厚膜結晶成長層を用いた、放射線検出器の研究開発を進めています。
● MOVPE 法の徴:
・ Si や GaAs などの基板上に成長可能なため大面積の成長層が得られる
・ 成長層の伝導型キャリア密度の制御や,成長層厚さの精密制御と多層化ができる
・ 高速成長が可能なため成長層の厚膜化ができる
● Si基板上の単結晶CdTe層成長:
Si 基板と CdTe 成長層では大きな格子定数差や熱膨張係数差が存在する。そのため Si 基板上に CdTe 層を直接成長した場合、
成長層の多結晶化、クラックの発生や基板からの剥離が生じやすい。これらを防止のため、Si 基板表面の成長前処理法を開発行い、Si 基板上への厚膜単結晶 CdTe 層の成長技術を確立した。現在結晶性の更なる高品質化、成長層の厚膜化・均一化、さらに電気特性の精密な制御を目指して成長条件の最適化を行っています。
3. 放射線検出器作製と特性評価
Si 基板上の CdTe 厚膜単結晶層を用いて単一素子検出器や (8x8) ピクセル(画素)の 2 次元画像検出器アレイ、さらに集積度を大幅に増加した (128x28) ピクセルアレイを作成している。 アレイの各画素は p-CdTe/n-CdTe/n+-Si ヘテロ接合型ダイオード構造となっている。製作した検出器に寄り入射放射線の検出とそのエネルギー識別が可能なことが確認している。現在作製したアレイの特性評価や特性の向上に関する研究しています。
4. ハイブリッド型ペロブスカイト単結晶の成長と X 線検出器の開発
X 線検出デバイスの開発を目指してハロゲン化金属ペロブスカイト型半導体の研究を行っています。ハロゲン化金属ペロブスカイトは簡単な方法で成膜が可能なため、太陽電池としての研究開発はここ数年で急速に進み高い変換効率が得られている。その一方で、これらの材料に含む Pb, I, や Br など重原子が X 線に対する高い吸収係数を持つことから X 線検出用材料としても利用可能である。しかし、X 線検出器として応用する場合、太陽電池とは異なり、数百μm から数 mm 厚さの高品質単結晶の結晶が必要となる。当研究室では以下の方法を用いてバルク単結晶の成長と評価、さらにデバイス作製に関する研究を行っています。
・ 高品質ハロゲン化金属ペロブスカイト単結晶の作製:Inverse Temperature Crystallization 法により MAPbI3, MAPbBr3 などのバルク結晶作製とその物性研究
・ 結晶の厚さや構造制御
・ 電気輸送特性と化学的安定性に関する検討
・ X線検出器の作製と電気特性・X線検出特性評価
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